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55.民族の世界地図

民族の世界地図 民族の世界地図
21世紀研究会

文藝春秋 2000-05
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「民族」という視点から世界を捉え、その文化と歴史について概観する
という大胆不敵な試み。

コンセプトは非常に面白く、アジアはもちろん、我々があまり知らない
アラブやアフリカについてまで満遍なく網羅されており、
辞書的な使い方もできる点で、長くお付き合いできる本である。

本書でも述べられているが、「民族」と言ってもその概念は明確ではない。
その分類単位は単なる生物学的な「人種」ではなく、
「文化」の場合もあれば、「言語」の場合もある。
それは、場所によって異なるということだ。

ただ、一つ言えることは、この「民族」という「単位」を考える場合、
それは「アイデンティティ」の「単位」と考えられるのではないか
ということだ。

「アイデンティティ」と言ってもまだ漠然としているが、
「価値観」と言ったらいいのだろうか。

もちろん、個々人に価値観の違いがあるのはその通りなのだが、
「民族」として同じ歴史・文化を共有してきた者達の間には、
何か一つの共通した「価値観」が根底にあるような気がする。

それをデフォルメすれば、「宗教」が際立つのかもしれないし、
「文化」が際立つのかもしれないし、「言語」なのかもしれない。
ということだとおっさんは理解した。

では、なぜこんなことをわざわざ考えたのかというと、
それは今日の国境の引かれ方と絡んでくる。

日本の場合は(一部少数民族の問題があるのは承知しているが)、
四方を海で囲まれた島国であることが多分に影響していると思われるが、
日本列島の中に、異質の民族的アイデンティティとしての異質の価値観
というのが見出しにくいため、「国境」の引かれ方について、
あまり実感を持って考えることは出来ないだろう。

しかし、海外にいけばそうではない。
民族的アイデンティティを共有した集団と国境とが一致していない
ことがむしろ大半なのだ。

本書では世界各地で起こっている民族紛争が、
そういう「国境の引かれ方」に起因するものとして、
その歴史を探るというスタイルをとっている。

そういう観点から、チェチェンがロシアに抵抗する理由、
また、アルメニアとアゼルバイジャンの紛争等の理由を
解き明かそうとしている。

ということは、これは半分以上「歴史」の本ということになる。
つまり、「21世紀研究会」という「ナゾの」団体による
彼らの「歴史認識」を記した書とも言える。

従って、批判があるのも事実だ。

【参考】「民族の世界地図」批判(佐藤和美)
http://www.asahi-net.or.jp/~HI5K-STU/europe/minzokuhihan.htm

たしかに、「21世紀研究会」っていう団体の構成員がどういう人たちなのか
全く明らかにされていないし、そういう点から、もしかしたら
素性を明らかにしたくない勢力による、「政治的意図」が働いていない
とも言い切れないだろう。

ただ、だからと言って本書の価値がないとは言えないのではないか。
「民族紛争」が世界各地で起こっているという事実、
そして、それを歴史的見地から解明しようとする姿勢。
この点は非常に参考になるはずだ。
読んで損になるとは思えない。やっぱりお勧めに値する本だと思う。

何事もそうだけど、書いてあることをそのまま鵜呑みにするのが
いけないのであって、そういう出来事があったということを認識した上で、
自分で調べる姿勢が必要なんだと思う。

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