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46.日本人のための憲法原論

日本人のための憲法原論 日本人のための憲法原論
小室 直樹

集英社インターナショナル 2006-03
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いきなりであるが、以下の命題に興味をお持ちになった方は
是非本書を手にしてもらいたい。

● 民主主義と議会は関係ない。
● 民主主義と資本主義は双子である。
● 民主主義は独裁者の温床である。
● 民主政治は貧乏人の政治である
● 民主主義のルールとは「契約」である。
● 第二次大戦を起こした原因は平和主義者にある。
● 日本国憲法が民主主義を殺した。
● 平和主義と軍備は矛盾しない。

この本は「憲法」の本であるが、単なる「憲法」の本ではない。
もちろん、日本国憲法の条文解釈の本でもない。

そんな視野の狭い話ではなく、
「近代法」そのものを社会科学的見地から解き明かした本である。

「憲法」に関する本を一冊だけ読めと言われたら、
有無を言わさず本書をお勧めする。そのくらい素晴らしい本だ。
「法学」や「政治学」の枠を超えられない学者には絶対書けない本である。
さすが社会科学の碩学である。

さて、この本は「憲法」の本でありながら、西洋史の話がほとんどである。
なぜだろうか。

それは、筆者曰く「憲法」とは、

「西洋文明が試行錯誤の末に産み出した英知であり、
人類の成功と失敗の経緯(いきさつ)を明文化したものである」

であり、そうであればこそ、「憲法」を知るためには、
欧米社会の歴史と、その根本にあるキリスト教の理解が不可欠だからである。

以前、この本を紹介した際に、
近代法の体系は、西洋のキリスト教的倫理観に基づくものであり、
その精神を受け入れなければ、いつまでも「法」に対する違和感は
拭えないという感想を書いた。

この本は、その理由をもっと具体的に深く掘り下げて教えてくれる。
「憲法」ないし「法律」を学ぶに当たって、まず何を差し置いても
最初に手にするべき本ではないかと思う。

冒頭の命題も、この本に全て答えが書いてある。
そして、それらは「民主主義」を理解するためには知っておかなければ
いけない話なのだ。論点は非常に多岐に渡るが、
ここではほんの一部だけ紹介させてもらう。

「民主主義」の背景にある「キリスト教的倫理観」とは何かという話。
それは宗教革命で起こった「カルヴァン派」の倫理であると説く。
そして、「資本主義」の起源もこの思想にある。
つまり、「資本主義」と「民主主義」はセットなのだと。
それは一体なぜか。

「カルヴァン派(プロテスタント)」の思想に関しては本書を参照して
頂きたいが、彼らは「神様を絶対視し、徹底的に禁欲すること」を
モットーとした。
それは「人間の存在を軽視し、贅沢を忌み嫌う」ことを意味する。

われわれは、
「民主主義」は「個々人を大事にする」という発想から生まれたものだし、
「資本主義」は「豊かさを求める」という発想から生まれたものだと
教わってきた。

しかし、その実は両方ともそれと全く正反対の思想を持つカルヴァン派
から誕生したのだ。この逆説的な因果関係を発見したのが、
かの有名な「マックス・ウェーバー」であるが、
彼は、このプロテスタントの行動原理を「行動的禁欲」と称した。

詳細は本書に譲るが、ここで民主主義を考える上で鍵となる
「人類みな平等」の発想は、カルヴァン派の思想に依拠する限り、
それは「人類への尊厳の付与」を意図したものではなく、

「絶対的な神に比べたら、人間なんてとるに足らない存在であり、
従ってそのちっぽけな人間社会の中にある、身分や地位の差なんて
神様から見たら、あってないようなものである。その意味において
人間は平等なのだ」

という考えとなる。
つまり、「人間の徹底的否定=神(イエス)の下での平等」となるのだ。
これが「キリスト教的倫理観」である。

従って、「民主主義」では「契約」が重要となる。
キリスト教は、まず「神」と「人間」との契約から始まるからだ。

また、本書からは「民主主義」が
決して自然発生的に生まれたものではないこともわかる。
「民主主義」とは権力との戦いの上に勝ち取ったものなのだ。
決して、「人類普遍の原理」などではない。

だから、勝ち取ったものである以上「守らなければならない」。
この本を紹介したときにも書いたが、この視点が日本人には決定的に欠けている。

真の民主政治をもたらすのも「民主主義」だし、
独裁者をもたらすのも、また「民主主義」なのである。
カエサルもヒトラーも日本の軍部も決して力ずくで権力を奪ったわけではない。
そこには民衆の熱狂的支持という裏づけがあった。
「民主主義」はそういう暴走を許してしまう性質を備えているのだ。

だから、「民度」が非常に重要になる。
「自分たちのことは自分たちで決める」ことが「民主主義」の本源ならば、
日本の「民主主義」の成熟度は、
まさに我々一人一人にかかっているのではないだろうか。
我々は「考えること」を、そして「議論」をやめてはいけないのだ。

(ちなみに筆者は日本国憲法に関しては、
「護憲派」でも「改憲派」でもなく、「日本国憲法は既に死んでいる派」である。
それは、日本国憲法が米国主導で作られたからとかいうような浅いものではない。
その理由も本書を読めばわかります。)

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