27.日本人のための宗教原論
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「日本人は宗教に無知である」と言われる。
この本の著者もそう言っている。
では、そもそも「宗教」とは一体何なのだろうか。
辞書的には「神仏を信仰し、幸福を求めようとする教え」だという。
何か表面的過ぎる感じがする。
十字軍による異教徒の大量殺戮。イスラームによる自爆テロ。
普通の感覚からは考えられない行動。
明らかに「宗教」と結びついていると思われるその行為は、
本当に「幸福を求めようとする教え」から来るものなのか。
マックス・ウェーバーは「宗教」を「行動様式」と定義した。
つまり、「あるものを信じ、その信じるものに従って行動する」ということ。
「神」とか「仏」とかいう概念はあえて取っ払う。
この定義は非常に巧い。
そうなれば、「宗教」も「イデオロギー」も同じ範疇で考えられる。
共産主義も「イデオロギー」を信じる一種の「宗教」なのである。
普通の感覚からは考えられない残虐な行動も、
信じるものに従って行動している限り、罪悪感などあるわけがない。
十字軍による異教徒の大量殺戮も、
イスラームによる自爆テロも、
共産主義者による革命テロルも、
彼らの「信じるもの」に従っている限り、全て正当化されるのだ。
筆者は言う。「だから宗教は恐ろしいのだ」と。
本書は、まず宗教とは何たるものなのか、
そして、それがいかに恐ろしいものであるかを論じた後、
キリスト教、仏教、イスラームのそれぞれについて、
彼らが信じるものは何かを「客観的かつ正確に」解明していく。
この「宗教を正確に知る」ことは極めて大事だ。
なぜなら、「行動様式」である宗教は、
文字通りそれを信じる人々の行為に対する動機となるからだ。
日本人が理解できない外国人の行動様式は、
「宗教」で説明できることも多いだろう。
おそらく、「英語」と並んで「宗教」の知識は国際常識のような気がする。
この本が優れているのは、「宗教」という極めて主観が入りやすい
テーマであるにも関わらず、筆者の中立性・客観性が貫かれていることだ。
たしかに、筆者は「イスラームこそが宗教の手本だ」と言っているが、
それは教義の内容ではなく「宗教」としての様式のことだ。
内面的信仰とそれを具現化する外形的行動の両方が
完璧に定義されているという意味においてである。
完璧な宗教などない。
なぜなら、死後の世界を知る人間など誰もいないからである。
それは、キリスト教やイスラームの言うように「永遠の死」なのかもしれないし、
仏教の言うように「輪廻転生」が起こるのかもしれない。
何を信じようがその人の自由だ。
人の思想信条をとやかく言うつもりはない。
しかし、それは人様に迷惑をかけない限りにおいてのみ
許されるのではないだろうか。
「宗教」は「幸福を求めようとする教え」であるようだが、
それが
「『自分(だけ)の』幸福を求める教え」なのか、
「『みんなの』の幸福を求める教え」なのか
によって人々の行動様式は変わってくる。
さらに、自分の信じるものを信じない他者に対して、
「それを許容・共存してもよいという教えなのか」
「それとも徹底的に排除すべきであるという教えなのか」
によっても行動様式は変わってくる。
では問題です。
「自分だけの幸福を求め、自分の信じるものを信じない他者
を排除すべきであるという教え」
だと人はどういう行動を起こすでしょうか。
考えただけでも恐ろしい・・・。
しかし、「宗教」はそれだけの力を持っているのである。
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